tossy

アヒルが、ガーガー

私的 2021 年ベスト 21 曲

毎年の自分を振り返るために書き続けてきたこのシリーズ。とっくに 2022 だが公開しておきたい。

Higher feat. iann dior ─ Clean Bandit
(Dan Smith, Jack Patterson & Michael Olmo)

2021 という一年を通して何故か何度も何度も聴いていたのが Clean Bandit の音楽。特に年初、感染症拡大で観光客も少ない京都の街を歩きながら、この地を愛する彼/彼女らの音楽が、透明な空気と寒さをまとった古都の様子や、静かな街並みの中から人々の営みを思うような気持ちにぴったりやなあと改めて感じたのがきっかけやと思う。時には自分自身や、大切な他者を、静かに祈るような/願うような気持ちを大切にしたいという感情を後押ししてくれる音楽性が、僕にはとても希少な存在。この楽曲もそういう Clean Bandit の届けてくれる、静かで美しく激しい感情を描いていて、よく聴いた。

How Will I Know ─ Whitney Houston × Clean Bandit
(George Merrill, Shannon Rubicam & Narada Michael Walden)

前述した Clean Bandit のテイストがホイットニーの、彼女が活躍した時代における若者のみずみずしいダイナミックな(抑えきれない)活力を表現した楽曲に乗った、どちらの良さも感じられる一曲。好みの曲調で聴くと単純に元気に・ハッピーになれる曲で、ふと入ったお店で流れていたりしてちょっと嬉しい気分になったり、良いイメージが多い楽曲やった。

Stronger ─ Clean Bandit
(George Moore, Grace Chatto, Jack Patterson & Oz Moses)

リリースからかなり年数が経っているのに、今になって他の楽曲以上に聴いた一曲。最初のサビ終わり、間奏に入ったところでハイハットが 3 回鳴らされる箇所が「このハイハット三発を聴きたいがためにこの曲を聴いている」と言ってもいいくらい好き。"Higher" とも "Rather Be" とも通じる、まさに Clean Bandit ここにありという感じの楽曲。

what you do to me ─ 53 Thieves
(Daniel Ely, Conor Jordan, Jessica Clarke & William Lewis Price)

起きる〜仕事する〜お酒を飲む〜寝るまでが狭い自宅で完結する毎日を送った一年。基本的に音楽は Apple Music で Electric とか Chill とかのプレイリストを流すのがファーストチョイスやった。よく流すプレイリストに入っている楽曲はどうしても再生数が増えてしまうので、結果として耳にこびりつくことになる。そういう(ここにはあまりリストアップしなかったが)とにかく何回も聴いた楽曲のうち、ふと「ええなあ」と思えたのがこちらの楽曲。テンポが速くない、品性を感じられるようなドロップがある曲は相変わらず好き。

月に吠える ─ ヨルシカ
作詞作曲、編曲 (Words and Music): n-buna / Vocal: suis

知識も固定観念も持たず初めて聴いて、後に特徴的な歌詞は萩原朔太郎氏の詩集をモチーフにしていると知ったが、それ以上にビートの作り方(特にすき間の設け方)が実はめちゃくちゃヒップホップ(的な側面を個人的に感じられた)ことが気に入った一曲。主役のボーカルとギターをしっとりと聴かせてくれる、でもソリッドでクールな印象もあるトラック。その調和させる感覚と能力が素敵。

アストラ ─ 内田真礼
作詞・作曲:Δ / 編曲:Δ・y0c1e

内田さん自身が「ここまで低い声で歌うことは少ない」と紹介していたように、トラックもメッセージも彼女のボーカルも低くて重い。そこから明るさを求めようとする方向へと、楽曲としても展開を増やしながら、時間と手間とリフレインをたっぷり用いて曲を締めくくっていく。初めて聴いたときから、内田真礼さんの/アニソンの、といった括り関係なく、物事の進め方・語り方みたいなところがすごい好みやと、かなりたくさん聴いた一曲。

ユメヲカケル! ─ TVアニメ『ウマ娘 プリティーダービー Season 2』
作詞:マイクスギヤマ / 作曲・編曲:東大路憲太 / 歌:スペシャルウィーク(CV 和氣あず未サイレンススズカ(CV 高野麻里佳トウカイテイオー(CV Machicoウオッカ(CV 大橋彩香ダイワスカーレット(CV 木村千咲ゴールドシップ(CV 上田瞳メジロマックイーン(CV 大西沙織

ゲームからではなくアニメからウマ娘へ触れた(結局あまりゲームはやっていない)身として、トウカイテイオーメジロマックイーンの関係性で多くの大人をボロボロに泣かせたその記憶を私にも思い起こさせる一曲。関連楽曲で再生した回数で言えば『うまぴょい伝説』や『GIRLS' LEGEND U』のほうが多いけど、この IP が持っている魅力の底にある、丁寧でリスペクトあるキャラクターの描き方についてこの曲はしっかりと伝えてくれるのが素敵。最後のサビ「走りまくれ もっと」部分で一度落として、そこからグッとラストスパートをかけていく展開がこのコンテンツらしくて非常にグッと来る。

オペラ劇場・『嗚呼それが我が宿命』 ─ アニメ『うまよん』ミニアルバム
作詞:伊藤仁 (Cygames) / 作曲・編曲:久保早瑠菜 (Cygames) / 歌:テイエムオペラオー(CV 徳井青空フジキセキ(CV 松井恵理子マルゼンスキー(CV Lynn)スマートファルコン(CV 大和田仁美)

曲とも言えるし、アニメの一話まるまるサウンドトラックとも言える、掛け合いが楽しい一曲。ある数日ずっとこの曲をリピートしながら仕事していたときがあり、やけに気に入っている。

KU-RU-KU-RU Cruller! ─ Aqours
作詞:畑亜貴 / 作曲:Kanata Okajima, Soma Genda / 編曲:Soma Genda

仕事で触れたことがきっかけで知った一曲で、イントロの入りからシティポップの人気再燃をしっかりとアイドルソングに生かしたことを感じられて、それが自分の好みに合っていた。人気ゲームアプリ:モンスターストライクとのコラボ施策のために作られた曲だが、小洒落たポップスを敢えて選んだチョイスが良い。

off ─ 東山奈央
作詞・作編曲:三浦康嗣

フィールドレコーディングで集めた身近な音で曲を構成する三浦さん楽曲として、2020 は『記憶 ─ イヤホンズ』を取り上げたが、2021 はその三浦さんが「ビートは東山さんが録音した彼女の日常の音だけでつくりました」という曲に驚かされた。これは音楽にしかできないコンテンツの在り方そのもの。

って feat. SONOMI ─ KREVA
Words & Music by KREVA

音楽を作ること。お客さんの前でパフォーマンスすること。つくづく KREVA 氏の生活や頭の中にはそれが中心にあり、その活動を止めざるを得なくなったからこそ日々の思考が漏れ出たようなアルバムが届けられた。中でもこの曲はトラックもテンポもラップも、彼にしか作れない音楽を、でも肩に力を入れず「ほどよく単調に、でも技巧をたっぷり生かして」まとめ上げている一曲で、アルバム内でいちばん気に入った曲になった。ラップを口ずさんでみると分かるが、テンポの取り方・言葉の詰め込み具合・音程のバリエーションがめちゃくちゃ富んでいて、僕には全然歌いこなせない。

Future Is Born (Live on MTV Unplugged: RHYMESTER, 2021) ─ RHYMESTER
Produced by mabanua / Lyrics by 宇多丸, Mummy-D, mabanua

天候に恵まれた暖かい春や、外に出て(実際にそうするかはさておき)動きたいなと思えるような暑い夏。でも外出や行動をすることがあまり望ましくない日というのも 2021 は多く、そういう中で同じ音楽で踊ることや感情を集わせることを、大人なライブパフォーマンスで届けてくれたライムス。未来のどこかでこのライブ盤を聴くときっとこのコロナ禍を思い出すだろうことは、ライムスを聴くと大学時代を思い出すのときっと同じことなんやろうなという気がする。

ひかりのディスコ ─ CAPSULE
Words, Music & Produce : 中田ヤスタカ / Vocal : こしじまとしこ

上記のライムスと似て、サウンドとボーカルを聴いた瞬間、人生のある時期へと一気にトリップさせてくれる CAPSULE の新曲。かつて『レトロメモリー』という名曲があったけれど、エレクトロニックなサウンドで温かみを感じられる楽曲を作ることについてヤスタカさんは本当に長けているし、中でもこしじまさんと組んだときは制約なくその魅力が引き立っている(と感じられる)ことが多い。

Nirvana ─ dodo & tofubeats
prod: 10goqstudio, tofubeats

ここから tofubeats 氏の関連楽曲が並ぶ。まずは「ナードなポップス・ラップミュージックの良さ」を、トラック・楽曲モチーフ共に感じさせてくれる一曲。ニルヴァーナをテーマにしたのは、意外とあっさりとした理由なのか、それとも深い境地を扱いたかったからなのか、そのあたりはよく調べていないので分からないけれど、能力あるミュージシャンが集まって「おもろいことやろう」って作ったのが、良い意味でこんなにナイーブな曲というのがとても好き。

SMILE ─ tofubeats
Produced by tofubeats

本人名義の楽曲としては「音楽をいつも聴いているだけ」なトラック・ラップ(やっぱいいよね)・自作のミュージックビデオがいずれも「信頼できるなぁトーフビーツくん」というこの曲が印象的。メジャー 1st アルバムのラストトラック『20140803』の再来的な印象。

free me [Rearranged by tofubeats] ─ butaji
(butaji)

この楽曲はシャワーを浴びながら流していたプレイリストに入っていて「めちゃ印象に残ったあの曲、誰の作品や?」と後から調べたら、トーフくんがリアレンジしたものと知って「やっぱ彼のサウンド好きなんやな」と改めて思わされて驚いた。敢えて「ダンサブルにしよう」としなくても素敵な原曲やと思うけど、終盤へ向けてたたみかけていくトラックは、歌っている内容も違った印象に感じさせてくれるので面白い。

One feats. tofubeats ─ STUTS
Produced by STUTS / Written by tofubeats, STUTS / Violin: Anzu Suhara / Cello: Junpei Hayashida

トーフくん関連では年内で最後に聴いた楽曲やけど、まさかの STUTS くんラップ!というのもスムースで好ましい、さわやかで前向きな一曲。この曲は STUTS くんの素直な音楽や物事へのスタンスがストレートに表現されていて、ストリングスも清潔で品がある印象に貢献しており、何回も聴いた。彼らはこうして曲を作って彼ららしく社会とつながっているのだから、自分もやれることで世の中と(うがった見方に支配されすぎず)関わろう、というような気分を持たせてくれる。勇気とか気概の話なのかもしれない。

doyu ─ iri
作詞:iri / 作曲:iri, TAAR / サウンドプロデュース:TAAR

彼女は歌っていてもラップをしていても唯一無二なスタイルを感じられて、弾き語り的な楽曲もすごく好き。でもグルーブ感に富んだトラックで自由にそのスタイルを魅せてくれるこの楽曲は、初めて聴いたときから耳に残って気に入っている。iri さんについては曲の表情というか、面構えというか、そういうのが生理的に好きなんだと思う。

燃えよ ─ 藤井風
作詞:藤井風 / 作曲:藤井風 / 編曲・Arranger:Yaffle

2022 へと向かう年末年始によく聴いていた一曲。彼の最新曲たちはどれも素晴らしいが、中でも特に「これは風くんにしか作れん」という印象が強くて気に入った(今回のコメント同じことばっかり書いてる気がする)。彼ほど美しい歌声と能力を持ったミュージシャンが、人間くさいどうしようもない部分や泥臭い生き方へ、しかし万人に届く格好良さを持って光を照らす楽曲を作ることに、僕はいつも賞賛したい気持ちが尽きない。

Dynamite ─ BTS
Written by David Stewart, Jessica Agombar / Produced by David Stewart

しんどい日を乗り切った自分を(内心で)賞賛したり、その日に溜め込んだ心の中にあんまり長く置いておきたくない感情をお酒と共に流し込んだり、酔いがまわって部屋で(ひとりで)小躍りしたりするには、その傍らに「完全無欠で時代が歓迎したポップソング」が必要となる。2021 におけるそれは、彼らの "Butter" や "Permission to Dance" も、Bruno Mars "Skate" も最高に良いが、僕は何故か "Dynamite" になった。作曲者のインタビューでプロデューサーに「ジャミロクワイや」と言われて 2 日くらいで作った楽曲というのを見かけ、なるほどなと。ありがたかった以外の言葉が出てこない一曲。

VOY@GER ─ THE IDOLM@STER FIVE STARS!!!!!
作詞:烏屋茶房 / 作曲・編曲:井上馨太 (MONACA) / 歌:天海春香(CV 中村繪里子菊地真(CV 平田宏美四条貴音(CV 原由実塩見周子(CV ルゥティン)新田美波(CV 洲崎綾)久川颯(CV 長江里加高坂海美(CV 上田麗奈)白石紬(CV 南早紀)望月杏奈(CV 夏川椎菜)鷹城恭二(CV 梅原裕一郎黒野玄武(CV 深町寿成)古論クリス(CV 駒田航)有栖川夏葉(CV 涼本あきほ)黛冬優子(CV 幸村恵理)浅倉透(CV 和久井優

かつて 2015 年に『アイ MUST GO!』という楽曲が 10 周年を祝う楽曲として制作された。当時の自分は思うように調和を自分の生活と精神状況にもたらすことができない中、その曲を思いや願いを込めながらよく聴いていた。それから 6 年が経って、相変わらず同じように悩むこともありながら、まだ自分の足で立とうと生きた 2021 年に、センターピースとして聴いたのがこの曲だった。タイトル『VOY@GER』とあるように未踏の宇宙へ挑んだ試みになぞらえた歌詞も、強烈なドロップを備えたトラックも、まあ簡単に言うと聴いていて泣いてしまうような情念を僕に与えてくれる一曲だということ。まだまだ旅の途中、不幸な途中下船をしなくて済むように、祈りながら 2022 年も過ごしたいところ。