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アヒルが、ガーガー

きな粉の雑煮 / お醤油ご飯 / すじこんのお好み焼き

生まれ育った地域が、大阪・奈良・京都の県境に位置するところだった。いずれかの府県に地域の文化がどっぷりと浸かった場所というわけではなかったからか、近隣する地域の色々な文化・様式が混ざり合った環境で自分は育っていたのかもしれない。

たとえば、もうすぐ来るお正月の食卓に欠かせないお雑煮。地域によって様々な特色があるメニューだが、自分の家庭におけるお雑煮は、白味噌の出汁・半月切りにされた大根と人参・丸餅がお椀に入ったもので、そのお椀から丸餅を取り出し、別皿に用意してある甘いきな粉につけて食すというものだった。これは奈良のご当地お雑煮らしいのだが、奈良県民ではないのにそれが家庭の普通であったのは、なんともグローバルな感覚がもたらされるので楽しい。

ごぼうや人参などの根菜、豚こま肉、油揚げやこんにゃくなどを醤油や出汁と共に白米と炊き合わせる、いわゆる炊き込みご飯。自分が家庭で食べていたものはオーソドックスな構成のものだったと記憶しているが、全国区で用いられる呼び名としての炊き込みご飯を呼称することもなく、関西圏で用いられるかやくご飯という呼び方をするでもなく、我が家ではお醤油ご飯というメニューが共通語となっていた。この呼び方はどこから来たものか。パッと検索する限りでは分からなかった。

大阪ならではの食事といえば、お好み焼き。実家のお好み焼きは、大阪風の範囲内で様々なアレンジが見受けられたものの、個人的に嬉しかったのは、祖母が作った牛すじとこんにゃくを煮込んだものが含まれたお好み焼きだった。活動源となる炭水化物としてお好み焼きは地域に鎮座していたため、ボリュームを上げるための焼きそばが含まれていないお好み焼きというのに地元で出くわしたことは思い出す限りほとんどなく、関東に出てきてからお好み焼きにそばを含むのがオプションであることを初めて知った。

ここまで書いて、実際のところ地元は京都府だったのだが、京都ならではの食文化というのが未だによく分からない。京野菜と言われてもスーパーに並んでいるのは他府県産の野菜だし、魚介類が苦手な身としては鱧を食す京都人みたいな風流を味わうこともない。なので、この期に及んで自分が京都の人間だということを、事実として受け止めはすれど誇ることはないんやろうなぁなんて思う。